日別アーカイブ: 2025年9月16日

三好工業のここがミソ~メンテナンスって?~

皆さんこんにちは!

三好工業株式会社の更新担当中西です。

 

~メンテナンスって?~


 

 

つくるだけで終わらない、100年使うための設計


橋は完成した瞬間から、風雨・温度差・塩分・車両荷重・地震・洪水にさらされます。だから橋梁の“本番”は、供用開始後に始まるメンテナンスです。ここでは、現場で役立つ視点に絞って、点検・診断・補修補強・運用の要点を整理します。







1|なぜ今、メンテナンスが要なのか




  • 予防が最安:劣化初期(ひび割れ・塗膜劣化・排水詰まり)で手当すれば、ライフサイクルコストは最小化できる。




  • 性能とリスク管理:安全(落橋・通行止め回避)と機能(耐荷力・走行性)の維持は、地域経済のバックボーン。




  • 人手・予算の制約:限られたリソースで最大効果を得るには、優先度設計データ運用が不可欠。








2|点検は“写真集め”ではなく、仮説づくり


点検の基本




  • 近接目視(定期):2~5年の周期でデッキ・主桁・支承・伸縮装置・排水を確認




  • 詳細点検:腐食・疲労・剥離・漏水など所見に応じ、NDT(非破壊試験)を併用




  • 特殊点検:水中・基礎(洗掘)、ケーブル内部、鋼桁溶接部など




使い分けるNDT




  • 超音波・磁粉・浸透探傷:鋼材の割れ・溶接欠陥




  • 電磁レーダ(GPR)・半セル電位:コンクリート内部の鋼材腐食状況




  • 荷重試験・加速度/ひずみ計測:疲労や剛性低下の推定




  • ドローン/ロープアクセス:近接困難部の省力化





点検は「現象→原因仮説→必要な追加調査→対策案」の小さなPDCA。写真だけを蓄積しても、劣化は止まりません。







3|劣化の定番と効く手当て


コンクリート系




  • ひび割れ・漏水:原因(収縮・曲げ・せん断・防水不良)を判別し、表面含浸・エポキシ注入・止水と排水改修をセットで。




  • 鉄筋腐食(塩害・中性化):断面修復+防錆モルタル、再劣化対策に**表面被覆・亜鉛系犠牲陽極・ICCP(外部電源防食)**の併用。




  • 床版疲労:ひずみ集中部をUHPC(超高性能繊維補強コンクリート)オーバーレイ、せん断補強筋追加、輪荷重対策の舗装更新。




鋼橋系




  • 塗膜劣化・腐食:素地調整→三層塗装(エッジはストライプ塗り)、排水と水切りの改善が長持ちの鍵。




  • 疲労亀裂:孔明け止端処理・添接板・溶接補修、応力再配分。継続モニタリングで再発管理。




  • ボルト・支承:緩み・固着・摩耗。規定トルク再締付け、支承はポット/球面/積層ゴムごとの更新計画を持つ。




桁・吊構造




  • ケーブル・PCグラウンド:ワックス/グリスの状態、破断線検知、乾燥脱湿システム。PCはシース内空隙充填・再緊張




  • 伸縮装置:破損は騒音・漏水の起点。計画的なユニット交換+防水連携。




下部工・基礎




  • 洗掘:水叩き・根固め(被覆ブロック・石張り)、流心変化の監視。




  • 地震対策:落橋防止、座屈拘束ブレース、ダンパ・免震支承の後付け。








4|排水・防水は“最初に効く補修”


最少コストで最大効果を出すなら排水





  • たまり水→塩分・凍害→腐食の負の連鎖を断つ。




  • デッキ防水(シート/塗膜)更新、側溝・桁端の清掃、排水管の勾配・口径見直しをルーチン化。




  • 排水改修は塗替え・断面修復の前にやると延命効果が跳ね上がります。








5|計画は「リスク×重要度」で並べ替える


限られた予算では、**危険確率×影響度(交通量・代替路・社会的損失)**で優先順位を決めるのが合理的。





  • クリティカル度:交通量、緊急輸送路、代替路距離




  • 劣化度:部材ごとの健全度、進展速度




  • 費用対効果:延命年数/コスト、工期・規制影響
    → スコア化して橋梁ストックのポートフォリオ管理へ。








6|運用で寿命を伸ばす




  • 通行規制の設計:夜間・片側交互・可動式防護柵で規制時間を最短化




  • 輪荷重管理:舗装のわだち対策、重量車の偏在抑制(路面標示・ハンプ・路肩保護)。




  • 冬期対策:凍結防止剤は散布箇所を限定し、春に洗浄計画。排水清掃を増やす。








7|データが現場を強くする(BIM/CIM・SHM)




  • センサー常設(SHM):加速度・ひずみ・温度・傾斜・ケーブル振動で異常兆候を早期検知。




  • デジタル台帳:図面・点検記録・補修履歴・塗替え年・支承更新年をデジタルツインに統合。




  • アラート設計:温度や風の影響をフィルタし、閾値超過→現地確認→対策の運用フローを明文化。








8|メンテの安全・品質・環境




  • 作業安全:高所・狭所・鉛含有旧塗膜の除去は、足場と養生、局所排気、血中鉛管理までセットで。




  • 品質管理:塗膜厚・素地粗さ・含水率、コンクリートの塩分量/中性化深さ、支承締付トルクを数値で検査




  • 環境配慮:ブラスト回収・排水処理・騒音粉じん管理。更新材は低VOC・長寿命を選ぶとLCCが下がる。








9|年間の基本ルーティン(例)




  • :冬期薬剤の洗浄、排水・伸縮装置点検、塗替え着手




  • :塗替え・断面修復本格化、床版オーバーレイ、河川基礎の潜水点検




  • :支承・ボルト再締付け、舗装更新、路面排水最終清掃




  • 冬前:落葉回収、凍害対策確認、緊急時対応計画の再訓練








10|90日でできる“延命の第一歩”




  1. 全橋の排水・側溝清掃を実施(写真と位置情報で記録)




  2. 桁端・伸縮装置・支承周りの近接点検で漏水・錆・緩みを洗い出す




  3. 劣化スコア×重要度で上位10%を抽出し、予防補修パッケージ(防水・被覆・再締付)を先行




  4. デジタル台帳を作成(図面・所見・対策・次回予定を一元管理)








まとめ


橋梁メンテナンスは、部材単体の手当てではなく、排水→防水→防食→疲労→基礎までを順序立てて面で解く営みです。
「早く・小さく・確実に」。この三拍子で予防を積み上げれば、通行止めも大型更新も“最後の手段”にできます。


つくる力に、使い続ける設計力を。
それが、100年インフラの最低条件です。